プリマス ダートムーア エクセター 

       2009年8月24日

 

 NOBURINと緑子さんは、イングランドの最果てに近いプリマスまで来てしまった。もう少し西へ130kmほども行けばコンウォール半島の先端ランズ・エンド(地の果て)だ。昨夜はプリマスの旧市街地バービカンを探索してホテルでゆっくり休むことができた。今日23日(日)は、プリマス メソジスト セントラル ホールでの日曜礼拝に出席する。

 

プリマスからダートムーアを横切る

          B&Bによると 、
”ダートムーアはロンドンから南西へ車で5時間。イギリスの国立公園に指定されている、954平方キロメートルの面積を持つ広大な荒野です。標高は高い所で600メートル。ヒースにおおわれた荒野には紀元前4000年頃からの遺跡(ストーンサークル、墳墓、住居跡)がいたるところに存在している。

 ムーアにはトーアと呼ばれる奇岩奇石が点在し、石の彫刻を思わせる不思議な形の岩は地球が大地を形成した時のもので、割れた岩の内部は結晶化しておりクリスタルを発見することもあります!その頂上に立てば、360度の大パノラマが広がります。

 そして、ダートムーアには別の顔があります。ムーアは天候が変わりやすく霧が発生すると一寸先も見えなくなり、怪しげな雰囲気が漂い始めます。そのため、数多くの妖精伝説や魔女伝説が今も存在します。過去に有名な小説に何回も登場し、シャーロックホームズの「バスカビル家の犬」の舞台になっていたり、アガサクリスティは小説「スタイルズ荘の怪事件」をダートムーアのムーアランドホテルの一室で書き上げました。最近では、スピルバーグ監督の最新映画「Warhorse」の舞台として、ムーアが撮影に使われています。

 

 私たちは、プリマスから上のGoogle Earth の地図のとおりダートムーアを通り抜けて、昨日訪れたダンスフォールドへ向かおうとしたのです。

 さて、私たちはプリマスの町から空港へ行く国道 A386号を取ってダートムーアへ向かいました。空港を過ぎた頃から雨脚が激しくなってきて道も田舎道で暗い感じ。いやな予感!気持ちを落ち着けようと、車の中で腹ごしらえ。降りしきる雨の中を再び走り出すが、標高が高くなるに従ってモヤモヤと霧が出てきた。ダートムーアもずいぶん入ったと思われるところ、10メートル先も見えなくなった。自分たちだけがダートムーアの荒野に取り残されたかと錯覚するぐらいでした。と、突然霧の中から対向する車が連なってやって来る。引き返してくるのだろうか。今更NOBURINは引き返すわけにも行かない。対向車の窓から腕を上げ下げしている人もいる。「進むのは無理だ」という合図だろうか?道路脇に車が止まっている。自分たちもその後ろに停車。さてどうしたものだろう。
シャーロックホームズ全集の中に「バスカヴィル家の犬」というダートムーアを舞台にした探偵長編小説がある。その終演の部分に、


”白い羊毛にも似た霧がムーアの半ばまで覆い尽くし、じわじわと家に迫ってきた。うっすらと白いものが、明かりのともった四角い窓に早くもまとわりついている。果樹園の反対側の塀が目の前からかき消され、蒸気のような白い霧の渦の中に果樹園の木のてっぺんがぽつりぽつりと残るだけになった。見る見るうちに家の左右を這うようにして霧の渦が回り込み、やがて分厚い壁となり、建物の屋根だけが夜の霧の海に浮かぶ幽霊船のように見えた。・・・・”

バスカヴィル家の再現かと思った。

 とにかく立派な舗装道路を走るのだから、道なりに地図に沿って行けばダンスフォールドへ行き着くに違いないとハンドルを握りしめた。 なんとなく霧が薄らいで前方の見通しが開けてきたような気がした。周りは岩がごろごろしているだけ。ムーアとは、木々がほとんど茂らず、岩肌がむき出しになった荒野のことだそうだ。霧と岩だけ。感動も、歓びも感じない。荒野に来たというだけの写真を撮って先へ進もう。

 

 

 いよいよダートムーアを抜けきるかと思われるところに、ポニーたちが草を食んでいた。しめた!絶好のシャッターチャンス。
  

一頭のポニーが道を横切ってこちらにやって来る。

NOBURINに挨拶をするではないか!NOBURINのことをずっと前から知っていたかのように、母馬は顔を近づけてきた。彼女はなにを言っているのだろう。「ダートムーアにようこそ。」というのか、「ダートムーアの道中ご苦労様。」と言うのか。その後に子馬がやってきて母の乳房に吸い付いた。霧の中のドライブ、何の感動もなかったが、この馬の歓迎にNOBURINの胸の中の霧がいっぺんに晴れてしまった。このことだけでダートムーアへ来たかいがあった。

 
 

 

 さすが名前の通り手入れが行き届いたお庭だ。到着するとスーツケースは、ご主人がさっさと今夜の部屋に運び入れてくださり、私たちは案内されて庭でのアフターヌーンティーのごちそうにあずかった。手作りのケーキに小型のタイムカプセルのようなポットに美味しい紅茶が入れてある。みごとな草花が咲き乱れる庭でケーキとお茶のごちそうは、身にしみた。庭に時々リスまでやってきて私たちを歓迎してくれているみたい。お話好きの奥様は異国の私たちに、外国にいる息子さんや娘さんなどのことを話してくださる。話の内容の分からないところがしばしばで、 ”パードン?”が多い。「すみません、あまり英語が上手でなくて。」と断りを言うと、彼女は「いいえ、私たちは日本語は一言も話せないのよ。あなたたちの方が上です。」と答えてくれた。民間大使だ。
夕食に出かけるには車を使ってはおっくうだ。奥様にわけを言って、電子レンジを使わせてもらうことにした。そして、こういうことのためにと持参したレトルトの赤飯を暖めて、インスタントの味噌汁で今夜の夕食だ。親切にもダイニングも使わせて下さった。赤飯という食べ物を説明するのに手間がかかった。十分理解して下さったかどうか怪しい。

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