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SCM
トラック
(三菱ふそう ファイター)
アオシマ改 1/32 |
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ファイターは、1984年にデビューした三菱ふそうの中型トラックです。もちろん、それまでにもふそうの中型トラックはライ
ンナップされていたんですけど、
「FK」等型式で呼ばれていまして、この型から車名が付くことになりましたんで、「初代」ファイターということになるんで
しょうか。
当時、三菱車のデザイントレンドがもう、定規で引いたのかってぐらいの直線基調で、なんかイマイチ線が細いというか、流行遅れな感じがしてならなかった
んですけど、
その流れがバス・トラック部門にもしっかり受け継がれているような感じがしますね。
ところがどっこい(死語)。いざ走ってるのを見るとトラックらしからぬスタイリッシュさで、これがむちゃくちゃカッコいいではありませんか。他社のトラックが、随分と野暮ったく見えたもんです。
まあ、今じゃどこのメーカーのバスやトラックも相当に垢抜けたデザインになってますけど、当時のインパクトは今でも忘れられませんし、先鞭をつけたのはやっぱりふそうなんだろうな、と思っています。
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その初代ファイターをベースにしたのが、このSCMトラックなんですが、小松左京の同名SF小説を映画化した「首都消失」に登場する車両です(原作には
登場しませんが・・・)。
で、なんでこんな車が登場するのかってことで、ストーリーを紹介。
ある日、半径30キロ、高さ2キロの、ドーム型の巨大な「雲」が首都圏を覆った。ありとあらゆるライフラインが遮断され、首都の機能は完全にストップ。
雲の内部に進入を試みるも、強力な力場に阻まれる。もちろん、内部からの脱出も不可能。一体、中の人とかどーなってんのよ、ってことでいろいろ調査してみ
たら、内部は空洞であるものの、案の定かなりヤバい状態。
一方、海外に目を向けると共産圏の某国が、首都を失った日本を狙って何やら不穏な動きをしてるし、アメリカの真意も読み取れないってんで、慌てて大阪に
臨時政府を立ち上げた。
そうした緊張の高まる中、厚木に研究所を構えていた電機会社の技術屋さん達は、「雲」に閉じ込められた人々を救出すべく、持てるノウハウを駆使して
「雲」の正体解明と突破を試みるが・・・。
とまあ、このようなあらすじでして、物語のテーマは、「何でもかんでも首都機能を東京に集約しちゃって、東京にもしもの事があったら日本は一体どーなん
のよ?」っていう壮大なシミュレーションで、自然災害(に限りませんが)の頻発する日本で明日にでも起こりうる、非常に緊張感のあるストーリーになるはず
でした。
もちろん、映画自体はテーマに正面から向き合って真面目に制作されたものですし、特撮の方も、中野昭慶特技監督の全仕事の中でも技術的に最高レベルと
言っても過言ではないと思います。
公開前にはTVで特番なんかも組まれたりしまして(○○の魅力に迫る!! とか、昔はよくやってたんですよ)、結構盛り上がってたんですよね。
私も特撮映画好きですんで、しっかり劇場まで行って観てきましたよ。
当時は久しぶりの特撮映画の新作ってことで、満足して帰ってきたんですけど、今になって落ち着いて観てみると、まあなんというか、ストーリーは突っ込み
ドコロ満載なんですよね。
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主人公は、大手電機会社「北斗電機」の技術者、朝倉(渡瀬恒彦)。もうこのころの渡瀬さんはすっかり演技派の俳優さんとして認知されてましたけど、個人
的には
「日本一殺気の漂うサラリーマン」という印象ですね。しかも理数系のインテリのはずなのに、自衛隊の幹部とマブダチって、交友関係からして只者じゃありま
せん。
家族持ちですが、カミさんとの関係はかなり冷え込んでまして、仕事一筋で家族をあまり顧みない普段の生活ぶりが窺えます。
朝倉の家族も「雲」の中に閉じ込められていますが、たまたま娘が圏外にいて無事でしたんで、後に再会を果たします。
他にもストーリーに深く関わってくるのが、フリーのTVキャスター小出(名取裕子)と、在阪TV局報道部の(ディレクター?)田宮(山下真司)と、あと
カメラマンの小山(ザ・ぼんち・おさむ)。
小出は、バツ1で実家に残してきた娘は「雲」の中という状況の中、果敢にレポートを続ける姿はまさしく「レポーターの鑑」と言えなくもありません。本人
はあまりそういうのは好きではないみたいですが、「知る権利」を盾にどこにでも現れ、針小棒大に煽り立てる当時の突撃レポーターそのもの。
そんな小出と合流して報道を続ける田宮も、スクープ至上主義で「他人の不幸は飯の種」を地でいくなかなかの下衆っぷり。演じているのが山下真司だってこ
とも相まって、暑苦しいことこの上ありません。
ちょうどこの頃、こういった取材のあり方とかがいろいろ言われ始めた時代で、この二人(とカメラマン)も、朝倉の仕事の邪魔こそしませんけど(いや十
分邪魔か)、他局を
差し置いて朝倉の仕事場に張り付き独占レポートを敢行します。
さて、北斗電機の技術開発部長である朝倉は、突如首都上空に発生した「雲」の正体解明に奔走します。
なんで国家存亡の危機って時に、一企業が率先して活動しているのかってことは置いときまして、彼が文字どおり命がけで収集した「雲」に関するデータを分
析した結果、「雲」の近くで強力な磁場を発生させれば、壁が不安定になって亀裂が発生し、突破口になるんじゃないか、という仮説を導き出します。
そこで彼は、自社で開発中だったリニアモーターカーのための超電導磁石に関する極秘技術を応用し、「SCM(SUPER CONDUCTING
MAGNET)トラック」を完成させたのでした。
泥縄で急遽開発したにもかかわらず、東宝自衛隊のパラボラ超兵器の流れをくむデザインになったのは単なる偶然だと思いますが(笑)、車両は2台製作され
たようで(あと1台、爆破用のがありますが)、それを各地点でロケーションして、何台も配置しているように見せています(攻撃ポイントが6カ所確認できる
ので計12台?)。
かくして雲作戦は決行され、2台のSCMトラックは「雲」にギリギリまで接近し、作戦を遂行。本作のヤマ場を迎えます。
ところが、台風が直撃して一時中断するも、朝倉は単身作戦を強行し、結果重傷を負って作戦は実質続行不可能に(現場指揮執ってるの、この人でしたか
ら)。
現場に絶望感が漂う中、何を思ったのか「今度は俺の番だ」と暴風雨の中飛び出して、SCMトラックに乗り込んだのが田宮。
ちょっと待てコラ!お前、部外者なんだから関係ねーだろ!!なんだよ俺の番って。
「ふざけんなーっ!!」と叫びつつ雲に向かって突撃かましてますけど、それはこっちのセリフだよ!しかもなんでSCMシステムの操作方法まで知ってるん
だよ!
つか、誰か止めろよ!!
とまあ、文字どおり「予想もつかない展開」で(笑)、最後の最後においしい所をコイツに持っていかれた朝倉は、何のために2度も死にかけたのか、よく分
からなくなってしまいました。
具体的なラストは書きませんが(もうほとんど書いてるようなもんだけど)、結局「雲」の正体は何だったのか、中の人は無事だったのか等、すべては謎のま
まエンディングを迎えてしまい、大ヒットの予感までもが「雲」と一緒に霧散解消してしまいましたとさ、とっぴんぱらりのぷう。
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いい加減、キットの話に移りましょうか。
キットはアオシマ製ミドルフレイトシリーズ、いすゞフォワードからの改造です。
なにぶんアオシマと言えば、デコトラのイメージが強かったんで、4トン車の平ボデーでしかもノーマルのトラックなんてあるんかいなと思いながらベース車
両を探してたんですが・・・ちゃんとあるんですね。箱車しかないと思ってました。
とはいえさすがにユニック車はリリースしていませんので、クレーンはスクラッチするんですけど、その前に荷台をカットしないといけません。自分の模型歴
の中でも1、2を争う高額キットですんで慎重にと思ったんですけど、思いっきり寸法を間違えたみたいで、辻褄を合わせるためにリアのオーバーハングがかな
り短くなっています。
パイプやレバーの類をかなり省略したうえで、手持ちの資料をもとに何とかクレーンは完成、キャブと荷台の隙間に押し込みました。
キャビンは、今までにやっていた車種替えの改造と同じ感覚で作り、TSのオリーブドラブで塗装してベース車両は完成しました。
本当は、アオリにロープを通すための穴が開いてるんですけど、すっかり見落としてました。ツメが甘いですね。
さて、ここからが更に面倒くさい。なにぶん上に架装するSCMユニットの資料がほとんどなくて、唯一あるのはCSで録画した映像のみという有様でしたんで、
TV画面を直接カメラで撮影し、画像を見ながら作りました。どうしてもはっきりしなかった部分はテキトーにでっち上げました。
荷台上のユニットはプラ板の箱組みなんですが、クレーンの上に乗っける部分は可能な限り軽く作らないといけませんので、ここも箱組みです。円筒の部分は
普段ならプラ板積層とかで作るんですけど、今回は円形にカットした2枚のプラ板のサイドにプラ板を巻いて作りました。
先端の八木アンテナのようなパーツは、1.2ミリのプラパイプに横穴を開けたものに0.8ミリの真鍮線を通し、更に0.5ミリの真鍮線を組み合わせて作
りました。そのままだとバラバラになりますんで、瞬間接着剤でがっちり固めてあります。
ケーブルはビニールコードに極細の真鍮線を巻いたもので、思った以上にテンションがあって、うまく「垂れ下がる感じ」が出ませんでしたね。
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さて、この映画、技術者サイドでストーリーが進行しましたが、政治的にも危機的な状況の中、大阪に臨時政府を設立した時に迎
えられたのが、党幹事長を務めるも政界を引退し、地方で療養中(どこが?すんげー健康そうだけど)だったという代議士の中田(丹波哲郎)。
この人が出てきただけで「これで日本は安泰だ」っていう気分になってしまうのは私だけでしょうか。
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